年次学術大会

学術大会

 第17回 日本カイロプラクティック科学学会学術大会

【会期】2026年6月13日(土)・14日(日)~30日(火)
【会場】ビジョンセンター品川アネックス(6/13)、オンライン学会(6/14-30)
【大会長】臼田 純子(Healthy Life Central)
【テーマ】「カイロプラクティック治療を科学する」The Science behind Chiropractic Care
【主催】日本カイロプラクティック科学学会
【後援】(一社)日本カイロプラクターズ協会・(一社)日本スポーツカイロプラクティック連盟
【講演】基調講演:中山和弘(聖路加国際大学大学院看護学研究科 看護情報学分野 教授)、堀田晴美(東京都健康長寿医療センター研究所 老化脳神経科学研究チーム 研究部長)、大野智(島根大学 医学部附属病院 臨床研究センター 教授)、木村篤史(厚生労働省医政局医事課)、招待講演:Simon Wang(Canadian Memorial Chiropractic College准教授)


第17回学術大会 大会長挨拶

臼田 純子
Healthy Life Central

第17回日本カイロプラクティック科学学会学術大会の大会長を拝命いたしました。開催にあたり、謹んでご挨拶申し上げます。

本大会のテーマは「カイロプラクティック治療を科学する」です。本大会は、会場での招待講演とオンライン学会での基調講演および一般演題発表により構成されます。6月13日の都内会場では、カイロプラクティック治療のエビデンス構築を世界的にリードするカナディアン・メモリアル・カイロプラクティック大学(CMCC)のサイモン・ワン(Simon Wang)先生を招聘し、招待講演を予定しております。

またオンライン学会では、根拠に基づく臨床(EBP:Evidence Based Practice)の実践に不可欠なヘルスリテラシーの向上をテーマに、聖路加国際大学の中山和弘先生、東京都健康長寿医療センターの堀田晴美先生、島根大学の大野智先生、そして厚生労働省の担当者による基調講演を予定しております。さらに会員による一般演題発表を通じて、カイロプラクティック臨床に関する研究成果の共有と学術的議論の深化を図りたいと考えております。

カイロプラクティックは1895年に米国でD.D.パーマーによって創始され、「科学(Science)」「芸術(Art)」「哲学(Philosophy)」の三位一体として体系化されてきました。ここでいう「哲学」とは、創始者が提唱したカイロプラクティックの独自性や存在意義を示す基本原理を指し、一般的な学問としての哲学とは性質を異にします。また「芸術」はテクニック(施術方法)の理論体系を、「科学」は臨床における客観的事実の検証を意味しています。

しかし20世紀後半以降、質の高い研究や臨床ガイドラインの蓄積に伴い、世界カイロプラクティック連合(WFC)などの国際会議においても、カイロプラクティックの基本原理の再検討、いわゆるパラダイムシフトが議論されるようになりました。現代医療において根拠に基づく医療(EBM:Evidence Based Medicine)が普及したように、カイロプラクティックにおいても「最新の研究知見」「臨床家の経験」「患者の価値観」を統合するEBP(根拠に基づく臨床)の概念が重要視されています。EBPとは、単に計測可能なデータのみに依拠するものではなく、これら三つの要素を統合し、臨床において最適な判断を導くための実践的枠組みです。

かつて業界内部では、これらの基本原理や用語を巡る議論や対立が存在し、外部からは疑似科学との批判や医療界との摩擦も経験してきました。しかしながら、こうした先駆者たちの努力と挑戦は、独立した脊椎ヘルスケア専門職としてのアイデンティティを確立させ、米国における法的資格の獲得へとつながりました。一方で、カイロプラクティックが世界各国へ広がり、各国の医療制度の中で社会的信頼を得ていくためには、社会に共有される「共通言語」による説明が不可欠となっています。

本大会のテーマである「カイロプラクティック治療を科学する」とは、私たちカイロプラクターがヘルスリテラシーを高め、「カイロプラクティック専門家特有の主観的説明」を「医療者や社会に理解される客観的言語(共通言語)」へと翻訳していく取り組みの重要性を示すものです。

カイロプラクティックの法整備がいまだ途上にある日本において、研究を積み重ね、根拠に基づいた説明責任を果たしていくことは、業界としての重要な責務であると考えます。臨床家の経験や患者の価値観を尊重する姿勢はすでに業界内に広く浸透していますが、一方で、最新の研究知見の活用や科学的に説明する能力については、なお多くの課題が残されています。根拠に基づくカイロプラクティック臨床が普及することは、日本の業界発展のみならず、高齢化社会における医療費の抑制やQOL(生活の質)の維持への貢献を通じて、その社会的有用性を示す重要な一歩となるでしょう。本大会が、カイロプラクティックの科学的基盤をさらに深化させ、臨床と研究をつなぐ有意義な学術交流の場となることを願っております。多くの皆様のご参加と活発な議論を心よりお願い申し上げます。

最後に、本大会の開催にあたりご尽力いただいた関係者の皆様に深く感謝申し上げるとともに、本大会の成功を祈念し、挨拶とさせていただきます。

【参考文献】

  1. Palmer DD. 1842-1913. Text-book of the science, art and philosophy of chiropractic for students and practitioners / by D.D. Palmer … founded on tone Portland printing house company Portland, Or. 1910
  2. Haldeman S. Principles and Practice of Chiropractic. 3rd ed. New York: McGraw-Hill, Medical Pub. Division, 2005. Print.
  3. Sackett DL, Rosenberg WM, Gray JA, Haynes RB, Richardson WS. Evidence based medicine: what it is and what it isn’t. BMJ. 1996 Jan 13;312(7023):71-2. doi: 10.1136/ bmj.312.7023.71. PMID: 8555924; PMCID: PMC2349778.
  4. Bussières AE., Al Zoubi F., Stuber K. et al. Evidence-based practice, research utilization, and knowledge translation in chiropractic: a scoping review. BMC Complement Altern Med 16, 216 (2016). https://doi.org/10.1186/s12906-016-1175-0
  5. Brown RA. Spinal Health: The Backbone of Chiropractic’s Identity. J Chiropr Humanit. 2016 Sep 8;23(1):22-28. doi: 10.1016/j.echu.2016.07.002. PMID: 27920615; PMCID:PMC5127906.
  6. Health Literacy. World Health Organization.(参照 2026-02-25)
  7. ヘルスリテラシー健康を決める力. 中山和弘. (参照 2026-02-25)
  8. 「統合医療」に係る情報発信等推進事業. 厚生労働省. (参照 2026-02-25)

基調講演

なぜ人は健康情報で迷うのか―信頼できる情報で健康を決める力

中山 和弘
所属聖路加国際大学大学院看護学研究科 看護情報学分野 教授

健康や医療をめぐる情報はあふれています。しかし、情報が多いほど、何を信じ、何を選べばよいのかは難しくなります。とくに統合医療・補完代替医療を含む広いヘルスケア領域では、科学的根拠が十分に確認された情報、まだ不確実な情報、体験談や宣伝に近い情報が混在しやすく、提供する側にも利用する側にもヘルスリテラシーが求められます。

ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する情報を入手し、理解し、評価し、活用して意思決定する力です。健康や医療の選択では、選択肢、長所、短所、価値観を整理することが重要です。しかし、その前提となる情報が信頼できなければ、長所や短所を正しく比べることはできず、納得できる意思決定にもつながりません。

本講演では、情報の信頼性を確かめる視点として、「誰が書いたのか」「違う情報と比べたか」「元の情報は何か」「何のための情報か」「いつの情報か」を確認する「か・ち・も・な・い」を紹介します。さらに、健康や医療の選択を支える枠組みとして、選択肢、長所、短所、価値観を整理する「お・ち・た・か」を取り上げます。信頼できる情報を土台に、専門職と利用者がどのように情報を共有し、納得できる選択を支えられるかを考えます。


– 脳と身体をつなぐ自律神経系 –
体性神経系との連携の基礎定

堀田 晴美
東京都健康長寿医療センター研究所 老化脳神経科学研究チーム 研究部長

体性神経系と自律神経系との相互作用は、骨格筋の健康維持に重要な役割を果たすと推測されるが、具体的なしくみについては不明な点が多い。

後肢(下肢)の筋神経には交感神経線維が豊富に含まれる。それら交感神経の活動は、動脈圧受容器からの求心性情報や体性求心性情報によって、抑制性あるいは興奮性に調節される。これらの交感神経はこれまで、骨格筋の血管を支配する血管収縮神経と考えられてきた。しかし近年、筋交感神経が神経筋接合部を支配し、シナプス前あるいは後に作用し、その形態や機能の維持に寄与することが報告された。我々は、ラットを用いて動脈周囲の交感神経と神経筋接合部との関係について、形態的・機能的に調べた結果、動脈の周囲のアドレナリン作動性神経(交感神経)の枝が神経筋接合部に接続することを形態的に見出した。さらに、大動脈圧受容器からの求心性シグナルが、交感神経への作用を介して筋収縮力を調節することを機能的に示した。動脈および神経筋接合部の両方に分布する交感神経が、この調節に関与しているらしい。このメカニズムは、高血圧に伴うサルコペニアの発症と進行を説明するのに役立つ。

カイロプラクティック等の施術が姿勢や運動パフォーマンスを向上させ障害を予防するしくみの一つに、この筋交感神経の新たに解明されつつある神経筋接合部への作用が関わるかもしれない。


統合医療の現状と課題:ヘルスリテラシーが拓く適切な活用に向けて

大野 智
島根大学医学部附属病院臨床研究センター 教授

日本における統合医療を取り巻く環境は、諸外国と比較して制度的な整備が遅れていると言わざるを得ない。欧米では補完代替医療(CAM)の有効性や安全性が公的機関によって検証され、医療システムの一部として体系化されている一方、日本では自由診療の枠組みに留まり、標準治療との境界線が曖昧なままである。この「制度の空白」は、優れた技術を持つ施術者が正当に評価されないリスクを生むだけでなく、患者が適切な選択を行う際の障壁となっている。

この現状を打破する鍵は、医療従事者と国民双方のヘルスリテラシーの向上にある。統合医療を正しく理解し活用するためには、単なる知識の蓄積ではなく、情報を批判的に吟味し、意思決定に活用する能力が不可欠である。特にカイロプラクティックをはじめとする身体への介入を伴う療法においては、エビデンスの質を見極め、個々の患者の価値観や病態に適応させる「根拠に基づく医療(EBM)」の姿勢が、医療者側にも強く求められる。

本講演では、日本の制度的課題を俯瞰した上で、氾濫する情報から真に価値あるものを抽出するためのリテラシー教育の重要性を説く。患者が主体的に、かつ安全にCAMを選択できる社会の実現に向け、カイロプラクティック従事者が果たすべき役割と、多職種連携の新たな形について提言したい。


医療関連法規および

「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~」概要

木村 篤史
厚生労働省医政局医事課

世間で行われている様々な手技による施術等について、関係する法律や通知等を紹介する。また、我が国の健康づくり施策の柱である「健康日本 21(第三次)」を簡単にご説明するとともに、それを推進するために整備された「健康づくりサポートネット」について、その目的や機能を紹介する。


招待講演

アジャストメントの効果、リスク、作用機序を探る

ワークショップ:患者のニーズに応える技術向上

Simon Wang
Canadian Memorial Chiropractic College准教授

本講義では、脊椎マニピュレーション療法(SMT)が生理機能、疼痛、臨床アウトカムに及ぼす影響について考察する。まず、機能障害の改善、疼痛調節、筋活動の変化、炎症への潜在的影響を含むSMTの効果を検討し、メカノトランスダクション(機械的シグナル伝達)を介したSMTの効果発現メカニズムを検証する。メカノトランスダクションとは、機械的力が細胞応答へと変換され、組織の適応や治癒を活性化させる過程である。これらの力は神経生理学的経路にも影響を及ぼし、機械感覚性シグナルを刺激することで機能回復や疼痛軽減に寄与すると考えられている。さらに、SMT後の感覚運動統合および皮質興奮性に関する最新の研究を紹介し、感覚入力とその処理の回復が運動制御、固有受容感覚、ウェルビーイングの向上にどのように結びつくのかを考察する。

さらに、SMTが疼痛を軽減する理由について検証する。疼痛調節は、末梢、脊髄、脊髄の上位中枢のメカニズムを介して生じ、侵害受容器、脊髄後角での情報処理、高次脳ネットワークに影響を与える。ゲートコントロール理論や下降性抑制といった基礎的な疼痛制御理論を概観し、これらのプロセスが運動や運動療法、日常生活動作への復帰を通じて、組織適応の「機会の窓」(いわゆる絶好の機会)をいかに生み出すのかを考察する。また、SMTのリスクについても取り上げ、一般的な軽微な有害事象について議論するとともに、脳卒中などの重大なリスクに関する現在のエビデンスを要約することで、バランスの取れたエビデンスに基づく視点を提供する。さらに、患者アウトカム向上のための戦略や研究についても議論する。サスカチュワン脊椎パスウェイ(Saskatchewan Spine Pathway)などの枠組みを用いて腰痛のタイプを分類し、個別化されたケアの重要性を強調する。具体的には、患者体験に影響を与える主要な要素―力加減の選択、メンテナンスケア、治療量、体位、方向性に基づく疼痛修正や相互抑制などのコンフォート(快適性)戦略―を検証する。また、SMT中に不快感が生じる理由と、それを最小限に抑えるための実践的なアプローチについても扱う。

最後に、患者アウトカムに影響を与える文脈的要因に焦点を当て、良好なコミュニケーション、適切な期待値の設定、安全性の醸成、メカニズムの明確な説明の重要性について考察する。さらに、カイロプラクティックケアがどのように機能するかを説明する簡略化された理論を紹介する。生体力学的要因、神経生理学的要因、職業的要因を統合的に捉えることで、カイロプラクティックケアがどのように有意義な臨床的変化をもたらすのかを説明する。

ワークショップ:本講義のワークショップでは、患者の快適性、コミュニケーション、治療成果を向上させるアジャストメントと徒手療法の実践的応用を中心に扱う。参加者は以下の内容について実演と実践的な練習を行う:

  • 脊椎マニピュレーション療法(SMT)のバリエーションと部分的変更(頸椎、胸椎、腰椎/骨盤)
  • 患者の快適性を高める体位設定の部分的変更
  • 快適性向上ゲーム(味覚テスト、可動化頻度、押さえて離す反応)
  • 相互抑制による患者の防御反応軽減
  • 力加減アジャストメントテクニック
  • 股関節マニピュレーションのバリエーション
  • カイロプラクターのための人間工学

【プログラム】
6月13日(土) 会場:ビジョンセンター品川アネックス

10:00-12:00 セッション1
12:00-14:00 昼食休憩
14:00-17:00 セッション2
17:00-17:30 シンポジウム

6月14日~30日 オンライン学会(録画配信)
  • 大会長挨拶
  • 基調講演①
  • 基調講演②
  • 基調講演③
  • 基調講演④
  • 一般演題 a
  • 一般演題 b
  • 一般演題 c

【参加費 招待講演+基調講演】
■ 正会員 25,000円(早割 15,000円)
■ 学生会員 10,000円(早割 7,000円)

【参加費 基調講演のみ】
■ 正会員 8,000円(早割 5,000円)
■ 学生会員 無料
■ 非会員 15,000円(早割 12,000円)

  • 早割の申込期限は2026年5月22日です(早割の期限を延長しました)
  • 招待講演はJAC会員対象の実技ワークショップです。JAC会員以外は、WFC加盟団体会員のみ参加可能です。
  • 招待講演は会場開催、基調講演はオンライン配信です。
  • 本大会の参加は、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)の必須単位として認められます。

【抄録集】PDFデータでお送りします。(参加費込)。印刷冊子をご希望の方は郵送料300円でお送りいたします。

【申し込み】申し込み締め切りは6月10日です。

招待講演のみ参加の場合は、「WFC役員会セミナー」サイトからお申し込みください。

【大会事務局】 日本カイロプラクティック科学学会事務局
東京都港区西新橋3-24-5-503 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会内
電話 03-3578-9390 Email : info@chiropractic.or.jp

お申込みフォーム

注)パソコン画面上でのビデオや携帯電話での動画撮影はご遠慮ください。ご了承の程よろしくお願いいたします。

日本カイロプラクティック科学学会
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