【会期】2023年6月18日(日)・19日(月)
【会場】オンライン学会(ZOOM利用)
【大会長】竹谷内康修(竹谷内医院 院長)
【テーマ】「リハビリテーションにおける統合医療の実践」
【主催】日本カイロプラクティック科学学会
【後援】(一社)日本カイロプラクターズ協会・(一社)日本スポーツカイロプラクティック連盟
【基調講演】
- 川嶋 朗(神奈川歯科大学大学院 統合医療学講座 特任教授)
- 白土 修(福島県立医科大学 会津医療センター 整形外科・脊椎外科学講座 教授)
- 大濱 眞(NPO法人日本せきずい基金 理事長)
- Richard Brown(世界カイロプラクティック連合[WFC]事務局長)
- 永岡 高行(厚生労働省医政局医事課)
【招待講演】
- 友広 隆行(トータルリハビリテーションセンター 代表)
大会長挨拶
大会長 竹谷内 康修
竹谷内医院 院長
世界保健機関(WHO)はリハビリテーション(rehabilitation)の定義を「環境と人々の健康状態との相互関係において、個人の機能を最適化し障害を軽減する一連の介入」1)としています。戦後、日本では欧米からリハビリテーション教育が導入された経緯もあり、リハビリテーションと言えばリハビリ専門職による機能回復訓練が一般的に知られています。しかしながらここ最近では、単に後遺症の改善や機能障害の回復だけでなく、人々が自分らしく生きることという広義のハビリテーションが認識されてきています。こうした広義のリハビリテーションが成り立つには、患者の意向に即した多職種連携によるケアや家族・地域社会からの支援が欠かせません。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)2)17 ゴールのうち3 つ目のゴールでは、「全ての人に健康と福祉を」の実現を目標に人々が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスが受けられるようユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)3)の達成を掲げています。またユニバーサル・ヘルス・カバレッジとは、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態を指し、リハビリテーションもユニバーサル・ヘルス・カバレッジの必須部分として位置付けられています。
昨年、WHO は各国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジにおいて医療サービの一環としてリハビリテーションにアクセスできるよう、エビデンスに基づく提言などの活動支援を行う世界的な専門家のネットワークとして世界リハビリテーション同盟(WRA)4)を立ち上げました。当初から、世界カイロプラクティック連合(WFC)は、WRA の創立メンバーに参加しています。
統合医療5)は、現代医療(西洋医学)、伝統医療、補完医療を組み合わせた人々中心の医療であり、疾病治療だけでなく未病改善や健康増進、さらにはQOL(生活の質)の向上や健康寿命延伸を重視していることから広義のリハビリテーションとも深く関係します。今回の学術大会は「リハビリテーションにおける統合医療の実践」をテーマに、臨床の知識として役立つリハビリテーションや統合医療の専門家による講演、さらには会員の興味深い研究発表をオンライン配信で予定しています。当日の参加が難しい方は、事前登録していただければ期間限定で録画を視聴することができます。会員の皆様の本学術大会へのご参加を心よりお待ち申し上げます。
1)Rehabilitation/リハビリテーション【世界保健機関】
2) 持続可能な開発目標(SDGs)とは【国際連合広報センター】
3) ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)【厚生労働省】
4) World Rehabilitation Alliance/世界リハビリテーション同盟【世界保健機関】
5) 「統合医療」とは?【厚生労働省 統合医療情報発信サイト】
基調講演
今必要とされる統合医療とその教育
川嶋 朗
神奈川歯科大学大学院 統合医療学講座 特任教授
日本には国民皆保険制度という世界に冠たる医療制度があるが、このためか日本国民は健康増進への意識が高い方ではなく、健康維持に努めるどころか通常は放置状態で、健康を損なった場合に医療者に依存すればよいといった傾向が強い。その結果国民医療費は増大の一途をたどり、このままでは日本は破綻してしまいかねない。人生100年時代を迎え、高い医療水準と医療技術で治す医療から高い幸福度やQOLを実現する癒す医療が求められている。それをいち早く見越した欧米ではこの理念を含む統合医療が盛んにおこなわれるようになってきている。
根拠に基づく医療Evidence-based Medicine(EBM)は人工知能に凌駕される日が来ることは明らかであるが、統合医療の実践に用いられる補完代替医療は科学的根拠に乏しく、まさに人間の医療者にしかできないのである。価値観や人生観、死生観まで理解できるのは人間だけだからだ。慢性疾患が増え、在宅医療の拡大が図られる中で、限られた医療資源を適正に配分し、多くの患者が恩恵を受けられるようにするには統合医療がもっとも適している。ところが、日本では医学界や行政が統合医療と積極的に取り組んでこなかったため、統合医療の正しい実践がなされず、さまざまな民間療法が野放し状態となり、これに依存したいわゆる癌難民などの被害者もあとを絶たない。
統合医療を体得し、理解できる人材を養成するには高度の大学院教育が必要である。行政による規制が進まない現状で、統合医療という概念が日本に浸透し、国民を守るには、正しい知識や実践方法などを、医師も含めた提供者に教育することが急務である。とはいえ、これまで、日本には補完代替医療を総合的に学べる高等教育機関はなかった。2022年4月、神奈川歯科大学大学院に統合医療学講座が誕生し、日本初の高等教育機関による統合医療教育が始まった。その現状などについて述べる。
整形外科分野におけるリハビリテーション
– 特に脊椎・脊髄疾患を中心 –
白土 修
福島県立医科大学 会津医療センター 整形外科・脊椎外科学講座 教授
「リハビリテーション(以下リハ)」の意味するところは多種多彩である。全米リハ評議会は、「障がいを受けた者を、そのなし得る最大の身体的、精神的、社会的、職業的、経済的な能力を有するまでに回復させること」と定義している(1942年)。世界保健機関(WHO)は、「能力低下やその状態を改善し、障がい者の社会的統合を達成するための、あらゆる手段を含む」と定義した(1968年)。つまり、リハは、「ひとがその人らしく生きるという、幅広い概念」を根底に持つ「総合的医療」といえる。これに対して、整形外科分野においてリハの意味する所は、やや狭義となる。歩行訓練、筋力訓練、ROM訓練など基礎的な機能訓練を中心とする理学療法、食事、更衣、入浴動作など、応用的ADLを対象とする作業療法などから構成される。実際の臨床現場では、温熱療法、牽引療法、装具療法を始め、注射療法なども含めて、手術治療以外の保存的治療手段全てがリハビリテーションを意味する場合も稀では無い。
整形外科的な「狭義のリハ」の代表が、運動療法である。運動は、運動器に対して数多くの利点を要する治療手段である。運動器に対する効果以外にも、内部障がい(糖尿病、呼吸器疾患、循環器疾患、慢性腎不全など)に対する有効性が高く、免疫機能を賦活させる効果があるとも言われている。著者は、現在まで、整形外科専門医、脊椎脊髄外科指導医として手術治療に従事すると同時に、リハ専門医として、運動器疾患、特に脊椎・脊髄疾患のリハ分野で研究・臨床に邁進してきた。本講演では、著者らの基礎的および臨床的研究を踏まえ、1)腰痛症、2)椎間板ヘルニア、3)腰部脊柱管狭窄症、4)思春期特発性側弯症、5)成人脊柱変形、6)脊髄損傷、7)その他、に関して、up-to-dateな知見と今後の展望を解説し、整形外科分野におけるリハの現状を紹介する。
脊髄再生医療とリハビリテーション
大濱 眞
NPO法人日本せきずい基金 理事長
脊髄損傷における再生医療では、脊髄の神経回路を修復するために、脊髄に色々な幹細胞を様々な方法で移植します。しかしその後、神経の再生を促進するためには、リハビリテーションが重要な鍵となります。神経回路がミスディレクションしても神経本来の可塑性で神経回路が正常に動くかどうかは、脳からの指令が手足にいくように促す必要があります。そのために、リハビリテーションが不可欠です。
医療制度におけるリハビリテーション強化に対する
カイロプラクティックの役割
Richard Brown
世界カイロプラクティック連合(WFC)事務局長
1997年以来、世界カイロプラクティック連合はWHO(世界保健機関)の公式連携の非政府組織であり、WHO 傘下組織である世界リハビリテーション同盟(WRA)の正会員です。WFC は WHO のイニシアチブであるリハビリテーション2030 に2017 年の発足から取り組んできました。リハビリテーション2030では、満たされていない世界中の膨大なリハビリテーションに対するニーズに取り組むことを目的とし、WHO の国際事業計画の主要な政策であるユニバーサル・ヘルス・カバレッジを支持しています。
2022年5月の世界保健総会で、医療制度のリハビリテーションを強化することを目的とした決議が提出され、WFCはステークホルダーの一員としてこの決議を提唱し、さらに筋骨格系障害が世界的に重要な非感染性疾患として認識されることを要望しています。筋骨格系障害は世界的な疾病負担の大きな要因であり、腰痛に限って言えば、障害を何年も抱えて生活する最大の原因です。他の脊椎や関節の疾患とともに、カイロプラクターが必要とされる臨床内容の大半を占めます。
世界中で 20億人以上がリハビリテーションにより改善できる疾患を抱えていると推定され、リハビリテーションの必要性が認識されてきています。こうした疾患には、生活の質に影響を及ぼし、重大な社会経済的負担となる慢性的な脊椎および関節疾患が含まれます。低所得国と中所得国は、医療サービスへのアクセスが制限されやく、過度の社会経済的負担に苦しんでいます。
カイロプラクターは、筋骨格系障害の非外科的・非薬物的マネジメントを専門としていることから、通常のケアには脊椎・関節マニピュレーション、運動処方、生活習慣のアドバイス、健康増進、患者教育などの徒手的介入が含まれます。プライマリーコンタクトの医療専門家として、カイロプラクターは理想的な形でリハビリテーションの提供と障害予防のアドバイスを行う立場にあります。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するためのグローバルヘルス戦略の必須部分として、WFC はカイロプラクティック教育の核心として提供されるよう、障害に配慮した人々中心の質の高いリハビリテーション教育を提唱しています。これにより、特に慢性疾患のある人において生涯を通じて健康アウトカムを改善することができ、多職種連携は重要な要素となります。
本講演では、効果的なリハビリテーションサービスの提供においてカイロプラクターが果たすことができる役割について説明します。2023年2月のWHO 執行理事会において、WHO加盟国の間で日本がリハビリテーションに関する決議を支持して発言したことに留意し、日本の医療制度の強化に向けてカイロプラクターが貢献できることについての議論は時宜を得て関連性があります。
法律による規制及び医療をめぐる課題について
永岡 高行
厚生労働省医政局医事課
世間で行われている様々な手技による施術等について、関係する法律や通知等を紹介する。また、少子高齢化の進展が見込まれる中で、どこにいても必要な医療を最適な形で受けられるために、厚生労働省で取り組んでいる医療提供体制の現状と課題について紹介する。
招待講演
カイロプラクティックとアクティブケア
友広隆行
トータルリハビリテーションセンター 代表
“せっかく良くなった患者さんが、次に来院された時に元の状態に戻ってしまっている”。そんな治療のジレンマを全てのカイロプラクターは経験しているのではないでしょうか。筆者が臨床で用いるカイロプラクティックにおけるリハビリテーションは、Dr. Jandaが提唱した(神経筋骨格の機能病理)を基軸としています。Dr. Jandaの唱える、器質的/構造的病理の変化に目を奪われず、低下した機能に着目する理論の意味について解説します。また、ホメオスタシス、パッシブケアとアクティブケアの融合、コンディショニング理論、誰でも行える効果的な簡単アクティブケアについてもご紹介します。臨床経験5万人を超える筆者が明日からの診療に使えるノウハウをお伝えします。
一般演題(症例報告)
- 寺澤絢香
- 臼田純子
- 若槻朋彦
【プログラム】
6月18日(日)
13:00-13:05 開会挨拶 第14回学術大会 大会長
13:05-13:10 学会代表挨拶
13:10-14:00 基調講演① Richard Brown
14:00-17:00 招待講演 友広 隆行
※14:00-17:00 途中休憩あり
6月19日(月)
10:00-11:00 基調講演② 白土 修
11:00-12:00 基調講演③ 川嶋 朗
12:00-12:30 基調講演④ 永岡 高行
12:30-14:00 昼休憩
14:00-15:00 基調講演⑤ 大濱 眞
15:00-16:00 一般演題(症例報告)
16:00 閉会
※14:00-16:00 途中休憩あり
【参加費】
■ 正会員 8,000円(オンライン参加)
■ 卒後1年 5,000円(オンライン参加)
■ 学生会員 無料(オンライン参加)
■ 非会員 12,000円(オンライン参加)
【抄録集】5月下旬に抄録集をPDFデータでお送りします。(参加費込)。印刷冊子をご希望の方は郵送でお送りいたします。(300円:郵送料および税込)
【お願い】
- パソコン画面上でのビデオや携帯電話での動画撮影、および写真撮影はご遠慮ください。ご了承の程よろしくお願いいたします。
【申し込み】申し込み締め切りは6月10日です。
【大会事務局】 日本カイロプラクティック科学学会事務局
東京都港区西新橋3-24-5-503 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会内
電話 03-3578-9390 Email : info@chiropractic.or.jp
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